ライブが決定してからずっと楽しみにしていた、いとうゆうこさんの2回目の ワンマンライブを見てきました。会場売りチケット2番を持っていたので、 前の方でプレッシャーをかけるつもりでいましたが(^_^;)、最近はどうも パワーが薄れてきたような感じです。私の方も慣れてきたことが影響している かもしれません(なんだかどうでもいい話だ…)。
 開場前に並んでいたのは15人〜20人ほど。この雰囲気だとそれほどお客さんは 多くならないだろうと予想していました。しかし予想に反してどんどん お客さんは増え、NESTでの前回のワンマンライブ同様、かなりの数の人に なっていました。関係者も多かったようですが、立ち見も出るほどでした。

 19:40頃開演。まずサポートメンバーが登場します。今回のサポートは Gt,Bs,Dr&Perc,Key&Vnでした。メンバーが揃ったのになかなか ゆうこさんは 登場しません。張り詰めた空気が会場を覆い尽くした頃にやっと登場。 薔薇の模様の入った赤と黒を基調としたガウンのようなコート、その下には 紫系のブラウス、シルバーのやや短めのスカートという姿。髪はパーマを かけた後にわざと崩したようなボサボサした感じで、ステージで映えるような 濃いめの化粧をしていました。いつもはあまり化粧している印象が無いので、 気合いの入っている様子がわかります。

 1. アゲホー
    Gtの大平さんのイントロでスタート。ややスローなハードロック系の曲。
    第一声を聴いたとき「少し鼻声かな」という印象。風邪でもひいたのでしょうか。
    スタンドマイクで、ぐだぐだした感じの動きをしながら唄っていました。
    いつものように絡み付くような唄い方です。
    この曲のタイトルは終了後に大平さんから聞いたのですが、正式なタイトルに
    なるかどうかはわからないそうです。サビの部分で「アゲホー」という
    言葉が何度か出てきます。聴いているときは「AGAIN」と唄っているように
    思っていまいた。ところでアゲホーってどんな意味があるのでしょうか。
 2. レモン
    激しい曲が続きます。この曲を聴くのは久しぶりという気がします。
    もし「フォークソング」から聴き始めたお客さんが来ていたとしたら、きっと
    この2曲で衝撃を受けていたに違いありません。元来ハードロックの出で
    あることを彷佛とさせる選曲です。間奏では、その雰囲気を中和するかのような
    Vnが入ってきます。ゆうこさんは曲の途中で大きく目を見開いて、客席を
    睨むようにゆっくりと見回していました。ほとんど瞬きせずにじっと
    見つめるのは、彼女の攻撃的な部分の表れであり、最大の防御であるのかも
    しれません。後半ではタンバリンを叩くゆうこさん。
 3. MrミルクとLadyペンギン
    8ビートを刻むイントロの比較的明るめの曲ですが、唄い方はいかにも
    ロックボーカリストという感じ。MrミルクもLadyペンギンも1回聴いた
    くらいでは意味がわかりません。サビはどこかで聴いたことがあるような
    メロディーでした。客席に知っている顔を見つけてはニコニコしていました。

 MC 「どーも。今日は(衣装が)派手だろ?なんか。最近はずーっとアコースティックライブ
    ばっか地方でやってたのね、だからストレスたまっちゃってさ。今日は
    とっても楽しいです。次はアルバムの中から3曲やります。」

 4. がんじがらめ
    ハンドマイクでモニタスピーカの前まで出てきて唄います。両手でマイクを
    握りしめるのも彼女らしい。なんとなくゆったりしたテンポでしたが、
    唄い方は比較的あっさりしていた感じで、重厚さは薄かった気がします。
    最前列のお客さんをなめ回すように見つめ、初めは笑顔を浮かべていた表情が、
    やがて曲の雰囲気に合わせてふっと厳しくなるところなど、いかにも
    ゆうこさんらしい。

 MC 「じゃ、次。にわとりとたまご」
 5. にわとりとたまご
    再びマイクスタンドで、タンバリンを叩きながら。2コーラス目で歌詞が
    飛んでしまい、思わず「しまった!」という表情をしていました。その後も
    また歌詞が出てこないところがありました。後半のサビの部分でVnが怪しげな
    メロディーを奏でます。最後にはタンバリンを振り回すように叩いている
    ゆうこさん。
 MC 「(歌詞が出てこなかったことに対し)ごめんね。」
 6. オブラート
    CDに入っているアレンジとはガラッと変わっていて、「LIKE A VIRGIN」の
    ようなイントロでした。比較的コミカル雰囲気になっているな印象が
    ありますが、声は本格的に出ています。最後は3連系にしてうまくまとめて
    いました。

 MC 「暑い暑い…。」ここでコートを脱ぎます。
    「とにかくさ、デビュー2月にしたでしょ。それから2回目のワンマンライブ
    なわけさ。私の計画としては…デビュー前にこういうことしてこうなって、
    というのは、全然予定通りにはいかなかったんだけど(笑)…最近大平さんが
    レコーディングの方もライブの方もプロデュースやってくれて、今日もこの
    メンバーと初めてやるんだけど…。まだまだ自分のイメージとかはもっと
    あるんだけど、少し掴んだような気がします。次はアコースティックの
    コーナー。」

 7. LOVE LETTER
    ゆうこさんもGtを弾きます。イントロはゆうこさんのみなのですが、ほとんど
    ギターの音が出ていません。「ごめん、シールド抜けてた」それじゃ音が
    出るわけありません(笑)。「このまま(シールドを)差し込んでいいですか?」
    とPAさんに確認。「急に腰が低くなっちゃって(笑)。」
    ギターから音が出るようになり、弾き語り状態から始まりました。せっかく
    ギターをつないでも、弾いている音は非常に弱い感じでした。
 8. マリア
    腕を組んでやや高圧的に唄っていました。4ビートを強調したアレンジで、
    曲の世界の切なさが出ています。Vnがそれを強調するかのようなメロディーで、
    できれば後半もピチカートではなく、鮮やかに奏でて欲しかったところ。
    ゆうこさんの声も表情豊かでした。
 9. 羊飼いの唄
    ギター弾き語りからアコーディオンが絡んできます。イントロに相当する
    弾き語り部分から本編に入るところの声の響きがドラマチックでした。
    初めて聴いた頃の迫力からは若干欠けるところがあるような気がしましたが、
    ブレスのひとつひとつまでもが曲の世界を装飾していました。アコースティック
    コーナーはここまで。
10. 頭でっかち
    最初の方はあっさりした感じですが(少し歌詞も落ちていましたし)、
    「ばかじゃないの」の辺りからガツンときて、そのままサビでパワー全開
    となります。

 MC 「(チューニングをしながら)11月11日に「星のかけら」という3枚目のマキシ
    シングルが出ます。…さっきの「LOVE LETTER」はそのカップリングです。」
    「「星のかけら」は…そうだそうだ、作曲してくれたブルームオブユースの
    松ヶ下君が来てくれるって言ってたんだけど、来てんのかな?いる?
    (反応無し)…あ、いない!あいつ…ま、いいや。」
    「(「星のかけら」を)作り始めたきっかけになったのは、本を読んでて…
    シャンプーや染める奴は商品にして出すために動物実験しなくちゃいけなくて。
    ウサギの目に原液をかけてどのくらいで腐るか実験してからじゃないと発売
    しちゃいけないんだって。そういうのが書いてある本を読んだのね。それが
    きっかけになって歌詞書いたんだけど。個人レベルで出来ることがいっぱい
    有ると思うの。音楽も一生懸命やっていくんだけど、音楽と平行して出来る
    範囲でいろいろやっていこうと思うの。でも少し経つと薄れてきちゃったり
    するじゃない。気がついたら忘れないようにしたいと思って、この歌詞を
    書きました。…そういうのがなくても過ごしていける世の中になったらいいな
    と思います。」
11. 星のかけら
    ゆうこさんのGtのイントロに、なんとなく雰囲気の違うVnが重なります。
    おとなしい前半に対して、「どうなるの」の部分から激しく力強い伴奏に
    なります。声も良く出ていて、彼女の想いの強さというかエネルギーを
    強烈に感じる唄でした。何度聴いてもこの曲は、サビからのメロディーライン
    が良いと思います。

 MC (次の「路地裏のカラス」のイントロの中でのMC)
    「私もこんな性格だから、スタッフとも随分喧嘩して、周りにも迷惑
    かけたんだけど。これからもいろんな人と出会うと思うし、いろんな人が
    離れていくと思うんだけど…いつもいつもみんなに感謝しています。」
12. 路地裏のカラス
    イントロから入るKeyが、スタッカートで弾いているうちはいかにもシンセ
    という音で、ちょっと雰囲気が違う気がします。途中からビブラートの
    かかった和音を押さえる形になって少し救われた感じ。
    曲の途中で「今日はありがとうございました。これが最後の曲です」
    と、しっとりと告げます。浮遊感のある手の動きで、救いを求めるような
    詞のイメージが出ていたと思います。ステージの大団円にふさわしい
    広がりのある演奏でした。最後に弾き語り状態になるのですが、あと少し
    のところで声が出ていなかったり、コードを間違えていたりしたのが残念。
    うまくごまかした感じはありましたが。

 終演は20:50でした。唄い終えると、振り返ること無く飲んでいた水のボトルを 振りながらステージを下りました。
 アンコールがあっても良かったような気がしましたが、アンコールは起こり ませんでした。私はとりあえず内容に満足していますが、他のお客さんは どうだったのでしょうね。なんとなくアンコールが起こりにくい雰囲気というか、 皆が聴き入って終わる形でしたし、しばらくいとうゆうこさんの世界の 余韻を楽しんでいたいという意味では、あの静けさは良かったように思います。

 全体的に、加藤和彦さんが絡んでいた頃の印象は薄くなり、デビュー前の ロック色の濃い内容に戻ってきたと思います。それは「フォークソング」などの 比較的あっさり唄う曲が無かったことからもわかります。仮にアンコールが あったとしても、「フォークソング」などはむしろ唄わないで欲しい内容ですね。
 MCで話していた、ゆうこさんの描いていたデビュー後のイメージは、 デビュー前のハードロックとしての色も含まれていたと思いますが、 やっとその形に近付いてきたと言えるのかもしれません。彼女の詩の世界を 遮らないアレンジ・音作りがなされていれば、若干ファン層は変わるかも しれませんが、方向として間違っているとは言えないでしょう。

 終了後もしばらく会場に残っていたところ、一人の女性が「ゆうこさんの 友達の方ですか?」と話しかけてきました。単なるファンだと言ったのですが、 ご丁寧にも「今、外で話してますよ」と教えて下さいました。今回初めて聴いた 曲のタイトルを教えてもらおうかと外に出たところ、大平さんに声をかけられて 希望は叶った次第です。「またホームページに書くの?」と言われましたが、 ご覧の通りです(笑)。
 その後は会場内に戻りましたが、他のお客さんが誰もいなくなったので、 そろそろ気まずい雰囲気だと外に出たところ、ゆうこさんが友達と話している ところでした。一声かけようかと思ったのですが、しばらく待ってもなかなか 隙を見つけられなかったので、あきらめて帰ってきました。
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copyright かみと,1998